最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)3179号 決定 1956年8月30日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人高沢正治の上告趣意第一点、第二点は、原審で主張判断のない事項に関し、当審において新らたに違憲、違法をいうものであって、適法な上告理由に当らない。(なお第一審判決の理由中、法令の適用につき、関税法百四条を挙げている点は、判文の表現に妥当を欠く点もあるが、右は昭和二四年法律六五号により改正された本件犯行時法たる関税法百四条を指したものと解することができる。それ故、所論第一点にいう違法は認められない。)同第三点は事実誤認、同第四点は単なる法令違反、同第五点は違憲をいうが論旨は原判決の是認した第一審判決の判旨を正解せざるに出でた主張であって、前提を欠き(第一審判決は、本件犯行時の関税法八三条により、原価相当の金額を被告人より各追徴する旨を判示している。しかし、若し被告人のいづれかが右追徴金の全部又は一部を納付した場合には、その納付済の部分については更に徴収をなし得ざるものであることは勿論であって、第一審判決は、所論のように重ねて追徴金を納付せしめる趣旨を何ら含むものではない。)、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)